突然ですが、私は無類のカレー好きです。
絶品と言われる名店のカレーから子供のころにキャンプで作った何が入っているかわからない闇鍋ならぬ「闇カレー」の類に至るまで、カレーと名の付くものでしたらカレーライスはもちろん、カレーパン・・なんでも大好きで、どんなものでもおいしくいただきます。
昨日も松本市内で評判のお気に入り店「メラ」さんで香味野菜と一緒にじっくり煮込んだ絶品、ほろほろ柔らかチキンレッグ入りスープカリーを食べたばかりです。
本日はそんな好物のカレーにまつわるほっこりのお話。
都内の我が家を離れ、遅ればせながら始めたマンションでの一人暮らしで10年近くも経って初めてエレベーターで出会った階下の住人がいました。
ヘアメイクをお仕事になさっているという女性でした。
急な仕事で海外へ出かけるため留守中に飼い猫に餌をやってくれる人を探しているというので、私が引き受けることになりました。
なんと女優の大地真央さんからもらい受けたという血統書付きの毛並みと体格がやたらに良い太っちょ猫くん。
慣れないながらも1週間近く面倒をみて、帰国した彼女がお礼をしたいとのことでお部屋を訪ね食事を一緒に摂ることになりました。
後で知ることになる料理の腕もプロ並みの彼女が、初めて私に作ってくれたのが「カレーライス」でした。
意外でしたが、好物なのでお代わりをしていただきます。
いただきながら、彼女が故郷、九州にある田舎の高校を卒業後メイクの勉強をするために憧れのロンドンへ留学したこと。
英語もまったくわからずに、それでも現地で友達もできそれなりに楽しく過ごしていたこと。
拠点を日本に変えがんばってみようと10年以上経って帰国したものの、初めて暮らす東京は思いのほか彼女にとっては冷たい場所で長いこと誰一人親しい友達ができなかったこと。
そんなときに初めて仲良くしてくれた年上の女性のお宅でご馳走になったカレーライス。
料理が苦手だと言いながらもその年上の方が精一杯の真心を込めて作ってくれたお世辞にも美味しいとは言えないカレーライスが、長い孤独で乾ききった彼女の心にはどこまでも沁みとおっていくようで、ただあったかくて、あったかくて・・。
人の心の温かさに溢れんばかりの涙を流しながらカレーライスを平らげたことなどを話してくれました。
若い時分から華やかな世界で生き、つい先ほど料理が出来上がるまでは次々とミシュランガイドに出てくるお馴染みの有名高級レストランや食についてばかり口にしていた彼女とはまた別の、素の姿を見ているようででした。
どんな高級なお料理よりも、彼女にとっては生涯忘れられない大切なおもてなしの食事だったのでしょうね。
出逢ってすぐに心を開き猫の世話を快諾した私への感謝を込めて、自分の人生で最高の食事をふるまってくれたのだと思います。
話を聞きながら、私も一緒になってもらい泣きしながら食べたカレーライス。
今でもふと、孤独の淵から救われたかのように泣きながらカレーを頬張り食べた彼女の気持ちを思い、どこか「ここにいていいよ」と言われているような ”心の居場所” を覚えるあったかさを伴う私の大好物です。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
小松万佐子から皆様へのメッセージ
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