信号待ちしているご年配の女性が首にふわっと巻いてらした藤色のショール。
冬独特、モノトーンの街の景色に品の良い明るい紫の色味が映えるなと
目をやった次の瞬間、強風に飛ばされ舞った。
大通りの信号で遮られた対面のずっと遠くからそれを見た私は
「あっ」と思わず駆け寄りたくなるがそれは叶わない。
彼女の周りには黙して信号待ちをする人々、背後の歩道を行き交う人々
近くでたむろっている学生たち、大勢の人がいた。
けれども、真っ先にその女性を車道に飛び出ないよう制したうえ
行き交う車に手を上げ、舞っていくショールを追いかけたのは
彼女の近くにはおらず、もっと遠くから駆け寄ってきた青年だった。
真っ黒な全身に派手なアクセサリーをあちこち身につけ
とがったつま先のブーツにヒョウ柄のマフラー。
すらりと背が高い彼が、同じように強風に煽られながら藤色のショールを追いかける。
やっとつかまえたショールを手にした青年は腰をかがめ
小柄なその女性の前で片膝をつき何か言いながらショールを手渡していた。
何度もお礼を言う彼女に軽く会釈して、足早に歩き去る。
”この国にはまだまだ明るい未来が待っている″
安心した表情であのご年配の女性が首に再び強く巻いた藤色が
街全体を覆うような灰色の冬空の下、いっそう映える朝だった。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
小松万佐子から皆様へのメッセージ
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