10代のころ知り合った友人にまるでモデルさんのように端正なお顔立ちをした女の子がいました。
おもわずため息が出てしまうほどその面差しは美しく、神様が彼女にだけ特別な彫刻刀を使ってつくられたのではないかしらと思うほど当時の私の目には完璧な美しさに思えました。
「こういう人に自分の体で嫌なところなどないのだろうな」と思春期真っ只中の私は憧れ混じりの気持ちでうっとり見惚れていたものです。
何人かで遊びに出かけたある日の帰り道、まさに先述の "自分の体で気になるところ” の話をしたことがありました。
なんだか幼さの残る思春期らしい会話ですよね。
件の彼女は「足の親指」と答えます。
「え?!」。
何人もいた女の子たちが一斉にムッとした表情を返します。
「嫌味~っ。美人はそういうどうでもいい部分を挙げるからいやらしいよね」と心ない言葉を発する子もいました。
両足の親指の形だけがなぜか他の指とは異なりずんぐりむっくりしており、それ故に足幅が狭く他の指もすべて細い彼女の足から親指だけが横や前に突き出てしまうのだそうです。
でも、少し想像してみたらどうでしょう?
靴を選ぶのがものすごく大変でしょうし、もしかしたら歩くのにも多少の難があるのかもしれません。
何より本人があえてそこを挙げているのですから他人がどう思おうと、何を言おうと、気になるものは気になる悩みなのだと思います。
後で皆がいなくなってから私に話してくれましたが、本人は夏になるとかわいいサンダルを素足で履いている周りの女の子たちがすごくうらやましかったそうです。
親指を見られるのが恥ずかしくて、サンダルを履いたことがないとも。
思い返してみれば、どんなに暑い夏でも彼女だけは靴下に靴のスタイルのまま洋服だけ涼しい装いだったことに気づきます。
人の悩みに大小はありません。
その人にとって、そのことが気になって本来発揮できるはずの力や生来備え持っていらっしゃる魅力を自ら内に閉じ込めてしまう苦しみや悲しさの原因になっているのでしたら、それは何であれ大きな悩みです。
身体や容姿に限らず、人に打ち明けることが難しい人生の悩みだって一生懸命に生きていればいくつかあります。
それを抱え続けることが苦しくなってしまったとき。
そんなときにはぜひ、少しだけ勇気を出していつでもあなたの力になりたいと思っている私を含めたカウンセラーや気の置けない周囲の友人、知人、あるいはご家族のうちで心を許せる誰かに話をしてみてほしいです。
最初はすべてでなくていいと思います。
無理なく話せそうなことを思いつくままに話してくださって大丈夫です。
言葉が出てこなくても大丈夫です。あなたのその痛みがもうそこから十分に感じられるはずですから・・。
「靴を選ぶのに少し大変かもしれないね。でも、親指がどっしりしていると体や他の細い指とのバランスで中心をとりやすいから体がそれをわかってあえてこうしてくれたのかもしれないよ。すごいね、身体って!サンダル履いたら先がのびのびして親指も気持ちいいかも」と私が言い、先の彼女と2人肩を並べて歩いたあの日からしばらくたった夏のこと。
彼女はオープントゥのサンダルを素足で履いていました。
ノースリーブのワンピースを着た彼女にすごく似合って、とても素敵でした。
意識的でも、無意識であっても、誰かの力を少しだけ借りてみるって想像以上に何かが変わります。
相手から何かしら心に響くことを言われることが大きいのでは決してなく、ご自身が勇気を出して悩んでいることを心の外へ出してみた行為そのものに大きな意味があります。
いきなりでなくとも、ゆっくりゆっくり納得しながら歩まれたらよいと思います。
少しだけ、ずっと閉じたままにしておきたかった心の扉を開けてみようと思われたとき。
ご自分の気分、ペースでいいのでそんなあなたのお話をぽつぽつと聞かせていただけたら何よりうれしいです。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
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