それは、秋の週末
宵の口のことでした。
昨晩、一日の仕事もすべて終え
夕食を家族で摂っていた時のこと。
裏の勝手口を軽くノックする音がします。
ちょうど食事を盛り付けるために
父がドア近くに立っていたとあって
扉を開いてみると
そこには見知らぬ顔が・・。
位置的に姿が見えない居間で
扉の前で話をする様子を
耳を頼りに伺っていると
どうやら迷子のようでした。
ごく限られた
ご近所さんの親しい方が
勝手口から訪ねていらっしゃることも
田舎暮らしですと
あるにはあるのですが
夜半はさすがに・・と
皆さん思われるのでしょう。
おそらく
昨晩のような時間帯では
近隣者でさえ訪問はありません。
応じている父が少し訝しげで
不安を覚え困っている様子から
私が呼ばれます。
外に出てみますと
見知らぬ若い女性と
年配の男性の姿があり
スマホの地図をのぞき込みながら
英語で話しかけてきます。
どうやら、場所や位置的には
あり得ない光景なのですが
ゲストハウスを訪ねる予定の方々が
最寄り駅から数分の表示を頼りに
訪ね来るも迷ってしまい
灯のついた我が家の勝手口へ(!!!)
迷い込んできた
そんな展開のようでした。
私は、行方不明者のお知らせでもあって
その方でも迷い込んでいらして
父は対応に困っているのかしら
くらいの想像まではできましたが
いやいや、観光客が坪庭から
入り込んで勝手口から訪ねてくるとは
想像もしていませんでした。
世の中、いろいろなことがあるものです。
先程、”場所や位置的には
あり得ないことなのですが”
と綴ったとおり
彼らが立つ勝手口のある坪庭は
そのまま裏庭につながり
裏庭は川と川沿いの我が家の
畳2畳ほどの家庭菜園を挟んで
ご近所の大農家さんの水田地帯へと
繋がっています。
どう考えても細い「たんぼ道」
いわゆる「あぜ道」を
歩いてきたことになるのです。
勝手口では灯が暗いとあって
スマホの画面が見づらいので
表玄関へと移動を促します。
父は私の背後で
見知らぬ人々を相手にする私に
不安を覚えているのでしょう
「こんな夜遅くに勝手口から
訪ねてくるとは、なんて失礼な!」と
少し苛立ちを見せていましたが
当の私は
「おろおろすんじゃないよ!」
「わからなければ
そういうことだってあろうに・・」
と心のなかで思いながら
(ウソウソ、口に出してました💦💦)
父を背に外灯が明るい表玄関へ移動します。
そこへ行って、再び、大変びっくらこきます!
な、なんと
特大サイズのスーツケースが
花の鉢を置いた玄関口にいくつも並び
さらには、ご年配の方と
小さなお子さんを含めた
計5人がそこにいらしたのでした。
どうやってたんぼ道からここに
この大きな荷物と
小さなお子さん、ご年配の方を含め
歩き連れ迷い込んでいらしたのか。
昨晩はそれほど極端には
気温は落ちていなかったものの
疲れていらっしゃるでしょうし
暗い中での会話は不安でしょうから
まずは玄関の内へ入っていただき
腰掛けていただくことにしました。
まあ、賑やかなこと!!!
スマホを一緒に見せていただきながら
英文サイトに記された
ゲストハウスの位置と住所を確認します。
ご近所らしいのですが
当ルーム同様
”ここ” とわかるような看板はないらしく
また、ここ1~2年で
この界隈に越していらした
新しい住人の方であろうこと
加えて、区画(隣組といいましょうか)が
我が家と異なるために
普段から面識やお付き合いが一切ない
お宅であることが障害となり
彼らのようにあぜ道を歩けば
徒歩1~2分程の距離のはずなのに
正規な道路を行くには
どこをどう行ったらよいのか
私自身がまずもって
わからないのですから
他者へ説明の仕様もありません。
外国語サイトには
電話番号が記されていたので
まずはご連絡してみることにしました。
携帯の番号のお相手は
オーナーであろう男性の方で
場所を知らせ
お相手もやはり
近所とはいえ我が家はわからないと思い
わかりやすいよう
初めて当ルームにご来所くださる
クライエントの皆さんと落ち合う
隣のスーパーの駐車場にて
待ち合わせてお連れすることに
させていただきました。
わさわさとやり取りをしながらも
玄関に座って
こちらの動きを見ている
5人の観光客さんを気遣い
時折、会話をするのですが
彼らは、インドネシアは
ジャカルタから
観光で日本を訪れている
ご家族+ご親戚だという方々でした。
昨日の日中までは
飛驒高山で観光を楽しみ
昨晩から安曇野入りして
長野県の観光を楽しむ
旅程だったようです。
お迎えにお越しいただいた
オーナーさんから電話が入り
門先までご夫妻で
顔を見せてくださったことに
ほっと安心しながら
5名のお客様を無事に
本来いらっしゃる場所へと
バトンタッチすることができました。
ガラガラガラと大きな荷物を引いて
去っていかれる別れ際に
お一人お一人
深々とお辞儀をし
握手をしていらっしゃいます。
父は相手が誰かわからないことが
終始、不安だったらしく
大丈夫なのかどうか
落ち着かない様子だったようですが
それは杞憂というもので
同じ経験(旅先で宿泊先の地図がわかりにくく迷って歩き回る)を
したことのある者には
彼らの気持ちもよくわかるので
ただただ、少しでも安心して
ほっとひと息ついていただきたいな
そんな気持ちだけでいっぱいでした。
「コーヒーかティーはいかが?」と
彼らに話かける場面を
父が奥で聴いたらしく
「あなたという人は一体・・・」と
半ば呆れていたようですが
何はともあれ無事に宿泊先に着き
ぐっすり休まれることを願って
驚きの一コマは幕を閉じました。
どうか素敵な旅になりますように。
そして、この国(日本)の暖かい人々に
たくさん出逢えますように。。。
昔、10~20代の時分に
海外あちこちの一人旅で
各地で訪ねる地域の人々の
暖かい思いやりに救われていた
私自身の若かりし時代の姿を
ふと思い出しながら
その背を見送らせていただきました。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
小松万佐子から皆様へのメッセージ
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