皆さんにとっての人生最大のモテ期はいつでしょう。
もしかしたら、今がまさに、とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんね。
きっとそんなあなたは今、ものすごく素敵な笑顔をされていることでしょうね。
以前、仕事でタイへ行ったことがありました。
今日の「まさこの部屋」はそこで出会ったとびきりの笑顔を見せてくださったタイの方々のお話しです。
当時の小渕総理が首都バンコクで開催されるUNCTAD(国連貿易開発会議)に出席するとあってその訪問に先駆けて現地入りし、在タイ日本国大使館をはじめ現地のメディアと打ち合わせをして取材の段取りをすることになっていました。
こうした国家元首が集う国際会議をはじめ国際的に行われるイベントでは、毎回メディアセンターなるものが設置されます。
世界各国から集まる新聞、テレビ、ラジオ、通信社と媒体はさまざまのメディアとジャーナリストが取材本部とするいわば共同の作業場です。
テレビ局や映画社など映像を扱うメディアは各国、各局からそれぞれ200Kg近い機材を飛行機に積み現地に持ち込んで、そのメディアセンター内に仮のスタジオや伝送施設場所を設けてしまうのですからどのイベントもずいぶん大がかりなものでした。
主催する国のホストと呼ばれる代表メディアが会議やイベント期間中、そこを取り仕切ってくれるわけですが、短い期間であってもある意味、毎日通っては集い作業をする場所なので、いつのまにか出先の我が家のような感じすら覚えるようになるから不思議ですね。
その共同作業場となるメディアセンターへ毎朝早い時間から詰めると、入り口にはホスト役を務めるタイのテレビ局の社員たちがものすごく素敵な笑顔で挨拶をしてくれます。
皆さんご存知のように、海外での仕事は時差があるので日本の時間に合わせて活動すると結構出先では寝ている時間がありません。
日本とタイでは2時間の時差ですから、夜遅くにメディアセンターを引き上げホテルに戻り、今度はホテル内に日本政府が設置した取材本部にてあれこれ動向について各担当と打ち合わせを行います。ようやく部屋に引き上げ、今度は東京の本社へ報告を兼ねたやり取りなどしているとあっという間に朝です。
2時間早く物事が動いている東京に合わせるのでほとんど眠る時間がない強攻スケジュールは時差の大小に関係なく他の国での作業と変わりありませんでした。
けれども、そんな最中に毎日メディアセンターの入り口で出会うタイのテレビ局のスタッフの笑顔ですべての疲れが吹き飛ぶくらい幸せな気持ちになれました。
よりによってこのUNCTADでは、現地の地球局という衛星通信を行う基地と会場に設置した発信のための大掛かりな機材ブースから伸びるケーブル施設との相性が悪く、いつもなら余裕でテスト試行まで終えて首相と政府関係者の到着を談笑しながら待つだけの状態の前日深夜になってもトラブルがいっこうに解消せず、関係者一同いわばパニック状態でした。
共に日本のテレビ局の代表としてペアを組むNHKの放送技術者も異例の事態にただその頭を抱えるばかりでした。
そんな10円ハゲが3つ4つ出来てしまいそうな状態でも、打ち合わせや作業の度に出入りするメディアセンターの入り口には深夜も交代で誰かしら座っているタイ人スタッフがニコニコと、柔らかく穏やかな表情で微笑みかけてくれます。その表情を見ると、急に心が落ち着いてやはり同じように穏やかな笑顔で返したくなるのですから笑顔の力とはほんとうにすごいですね。
通りかかるたびに向けられるその素敵な笑顔に助けられ、明け方まで吐きそうになりながら日タイ双方の技術者や省庁を巻き込み手分けして各所の原因を突き止め、大手を振って日本政府取材団の到着を迎えられたので結果はオーライだったといえるでしょうか。
会議が始まっても相変わらず素敵な笑顔に迎えられていたある日、その入り口にいる一人のスタッフに呼び止められました。
不思議に思って近づくと、メッセージカード付きのチョコレートを渡されます。
「あぁ、そうでしたね。明日はヴァレンタインデーでしたね」とお礼を言って受け取りしばらくしてまた通りかかると今度は男女数人のスタッフがそれぞれに、メッセージカード付きのチョコレートのほか可愛らしいクマのぬいぐるみや子どものお誕生日会に登場するような風船までプレゼントしてくれます。
結局、その日一日だけでも10数個のチョコレートをいただき、ビックリして迎えた14日のヴァレンタインデー当日にはさらにそれを上回る数のチョコレートやプレゼントをいただくことになります。
いったい何が起きているのかわからなくてまとめ役のような女性に訊ねてみると「タイのヴァレンタインデーでは女性から男性へ向けてチョコレートを贈るのに限らず、男女関係なく自分が好きな仲良くなりたい相手に “あなたの笑顔にありがとう” という意味を込めてチョコレートを贈るんですよ」との返答がありました。
また、「あなたはいつもここを急ぎ足でたいへん忙しそうに行き来するのだけれど、それでも必ず私たちを見てまるで子供のように純粋な笑顔で手を振っていってくれる。どれだけ私たちが幸せな気持ちになるかわかりますか」と続きました。
私こそ、いつも通りかかるたびに素敵なとびきりの笑顔をもらって感謝いっぱいだったのに、なんとも相手もそう思っていてくれたのだなぁとものすごく幸せな気持ちになりました。
私の横では「なんで小松さんばっかりそんなにモテるんだろう」と社から同行している報道技術のおじさんが首をかしげながら同じつぶやきを繰り返し悔しがっています。
たぶん、チョコレートをどれだけヴァレンタインデーでもらったかという点では私の人生最大のモテ期はあれが最初で最後だったのではないかなと思います。
新しく買い足したスーツケースには、私を励まし続けてくれた笑顔に加えタイの方々から頂いた素敵なヴァレンタインの贈り物が詰まっていました。
どんなときもあの大きなスーツケースいっぱいに詰まったチョコレートやプレゼント、そして贈ってくださったタイのテレビ局の皆さんの温かい想いを忘れずに笑顔を絶やさず、その笑顔で多くの人々と交流ができるようでありたいなと今でもずっと思っています。
私たちの毎日は、本当にいろいろなことが起ります。
どんなにたいへんなことがある中でもあなたが向けてくれる笑顔に、とびきり美味しいチョコレートとスーツケースに収まりきれないほどの感謝や愛情を贈りたい方々があなたの周りにはたくさんいらっしゃることでしょう。
そんな素敵な皆さん一人一人の笑顔に、私からもヴァレンタインデーならではの特別な感謝を贈らせていただきたいと思います。
「いつも、笑顔をありがとうございます。Happy Valentine's Day !」❤
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