つい先日のことです。

とても寒い朝でした。

朝陽が久しぶりにまぶしいほどのきらめきを見せて

なんだか良い一日が始まりそうな予感でした。

霜降り 

庭のあちらこちらでみられる木と木をつなぐかのような蜘蛛の巣。

その蜘蛛の巣が凍っているというとおかしな表現ですが

ところどころに光の粒がついてキラキラ光を帯びています。

きっと霜が降りたのでしょう。

雪とはまた異なるうっすらと白んだ薄い膜が

庭の、大地の、あらゆるものの上に張っているようでした。

朝陽の陽光にそれらが照り映えてなんとも幻想的な光景です。

光のように輝く粉が私を取り巻くように舞う現象を眺めて

「あぁ、これがダイヤモンドダストというものなのだな」と

感慨深く眺めていました。

それにしても、なんて美しい光景なんでしょう。

その日の午後、仕事で出かけた先がお世話になっているコンサートホールの近くだったので

ご無沙汰してしまっていることもあり、久しぶりに顔を見せがてらご挨拶に伺ってみることにしました。

お元気そうな様子に安心し、雑談を交わしている最中に

「そういえば、今朝はダイヤモンドダストが見られましたね!」

と弾んだ様子で言いますと

「ダイヤモンドダストなんかマイナス15度以下にならんと見られへんよ~」(大阪ご出身→関西弁)と呆れた様子の館長さんの返答。

私の父も一緒にその現象を見たと言いますと

父をよく知ってくださる方なので逆に心配もされ

「お父さん、目から星でも出たんちゃうん? どっかぶつけたんちゃうん? 逆に心配やわ・・」

と笑われてしまいました。

物を知らぬとはなんともおそろしいことです。(笑)

コーヒーを飲みに寄ったのか、館内併設のカフェにいらした地元の方も

「ダイヤモンドダストはこんな里の暖かいところでは見られない」と

呆れたように笑っていらっしゃいます。

いったいあの幻想的な現象はなんだったのか

ぜひ機会あらば、詳しい方に訊ねてみたい気がします。

 

その日の深夜、真夜中1時過ぎくらいだったでしょうか。

書き物をするノートを居間のテーブルに広げたまま

例によって得意のうたた寝をうつらうつらとしていたときのこと。

静寂さを打ち破るような電話音が長く鳴り響きます。

最近、近くに住まう両親の知り合いのご高齢者が

いくぶん認知症の気が出てらして時間に関係なく電話を鳴らして

いらっしゃることが何度かあったものですからまたそのケースかと思い

受話器もとらずにおりました。

30分後、再び電話が鳴ります。

先程も15コールくらい、今回は20コールくらい鳴り続けるので

さすがに相手をしなくてはダメかと電話をとると

急いた様子の若い女性の声がします。

高齢の親戚がお世話になっている病院の看護師さんでした。

「深夜、お部屋に伺ったらお亡くなりになっていて・・」と

諸々の手続きなどを父に求めるための連絡でした。

(看護師さん、大切なご連絡をくださったのにほんとうにごめんなさい。件のお騒がせ電話と間違えました・・)

まだまだ亡くなるような状態にはなかったので誰もが想定していなかった死でした。

子供の頃に何度かお会いし、会えば可愛がっていただきお世話になったものの

青年期以降、最近では特になかなかお目にかかる機会もなくなってしまっていた

いつも温厚で、眼差しの優しいおじさんでした。

 

あの日の朝、私と父がはしゃいで感慨深く眺めた

朝陽の下で世界が ”黄金色のキラキラする粉” で包まれたような現象は

ひょっとすると私たちだけが気づいた何か違う世界からの知らせだったのかもしれません。

 

投稿者プロフィール

小松万佐子
小松万佐子こまつまさこ心理相談室(安曇野ルーム)心理カウンセラー
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