以前、中医学の基礎を学んだことがあります。
整体観を基本とする中医学では、人は自然界の一部でありそれらの変化によって一定の影響を受けると考えられています
四季によって気候が大きく変わる日本で生活する私たちの暮らしにおいて、結構この考え方は昔から自然と日々の生活に取り入れられていることに気づきます。
そのなかでも季節に合ったものを食べるということはとても大切なことですが、これも実は昔から私たちが育った家庭や地域の中で自然と習慣として教え伝えられやってきていることなのですよね。
昨日の我が家の夕食は、庭にたくさん顔を出していた「ふきぼこ」(長野県では「ふきのとう」のことを「ふきぼこ」というそうです。”ぼこ” は赤ん坊や幼児を意味するので “ふきの赤ちゃん”とは、なんとも可愛らしい呼び名ですよね!) を摘み天ぷらにしていただきました。
やはり旬のものはおいしいですね。
この時期は冬眠していた動物たちは目覚め、日照時間はぐんと増えますし、木々があちらこちらで芽吹き、中医学でいう自然界の「陽気」が増えてきます。
人は自然の一部と捉える中医の世界では、人にも同様に陽気が増えると考えられています。
春は冬よりも活動量が増え、気血が体表に集まり新陳代謝が活発になるため、気の巡りを主に司る「肝」に負担がかかるのですね。
私たちがこの時期にいただく食材は「肝」に必要な栄養を補うこと、また急激に負荷がかかる「肝」の働きを改善するようなものが必要となってきます。
また春には風がよく吹きますが、この風は下から上に向かって吹くものが多いとも言われています。
この時期の体調不良が風邪をはじめどちらかというと上半身に症状が出やすいのはこのためかもしれませんね。冬の間に弱った体に侵入した ”風の気” は体の中を移動しやすいとあって、具合の悪い症状があちらこちらに変わりやすいことも特徴です。
せっかく気や血の巡りがよくなり身体全体が活性化していくことを滞らせないためにも、良いとされるのが「辛味」と「苦味」の組み合わせです。
辛味はご存知の通り発汗作用があり、また健康に影響を与える悪い気を発散させる効能も備えています。
代表的な食材は、春菊、ショウガ、ネギ、シソの葉、ヨモギ、フェンネル、花椒、シナモンなど。
苦味は上に昇りやすい気を下へ降ろし、上半身にこもった熱を取り除く働きがあります。
主だった食材は菊花やヨモギ、タンポポ、ゴボウ、苦味の山菜類各種、セロリ、くちなしの実などになるでしょうか。
そこに季節の菜の花や空芯菜をはじめとする旬の青野菜を取り入れると、高まり過ぎた「肝」の働きを抑えなお効果的のようです。
また「肝」は盛んに働き始めると消火器系統の働き全般を表す「脾 (ひ)」の活動を妨げるので「甘味」を補うことで「脾」の負担を和らげます。またそんな活性化している「肝」を刺激しすぎぬよう「酸味」を少し他の季節より控えめにすることも付記しておきますね。
けれども、一番大切なこと。
それは、こうして長く厳しい冬をこらえ待ちに待った春を無事に迎えられることへの感謝を覚え、目の前にある食事をおいしくいただく気持ちですね。
たとえ忙しさから手間暇をかけられるものでなくても、身体に良い効能でなかったとしても、「美味しい、美味しい」と笑顔で食することができるのであれば、どんな食材や食事であれ、その方にとっては最善、最適な食事なのだと思います。
また、身体に良いとされるものも、悪いとされるものも、どちらも過ぎることなく ”ほどほどに” が大切ですね。
「~を食べなくちゃ」、「~を摂ってはダメ」という考えばかりがあっての食事は、身体にはもちろん心にも良くないです。
理屈よりも、皆さんの体は今の状態にとって適した、また最も良い状態に身体の機能を保つために必要な栄養や食材を自ずと欲し、知っているはずです。
どうぞ、”ほどほどに” だけは気をつけて、体調にも大きく変化が表れやすい季節の変わり目だからこそ、心の声同様にご自身の身体の声にもぜひじっくり耳を傾けてあげてくださいね。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
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