北欧を代表する音楽家というと
皆さん、誰を思い浮かべるでしょう?
今日お話するのは
学童期の音楽の授業で
登場していたことを
覚えていらっしゃるかどうか。
『ペール・ギュント』組曲などで
知られているグリーグの曲から
引用させていただきます。
私の中ではグリーグの代表作というと
『ピアノ協奏曲(a-minor Op.16)』
だったりするでしょうか。
嫌になってしまい
蓋を開けず
触ってさえいなかったピアノを
約27年ぶりに再開した数年前
復活にふさわしい指慣らしとして
グリーグの『抒情小曲集』
と出会いました。
全66曲で成る小曲集なのですが
初めて取り組む作品集を通して
北欧独特の和声の響きを味わいながら
改めて ”歌う(楽器と共に)とは・・”
ということを
しっかり学ぶよき時間でした。
一番最初に27年もの歳月を経て
鍵盤に触れ弾いた曲が
同作品集の1曲目
『アリエッタ』でした。
小さなアリア、そよ風・・
まさに、言葉そのもののような
瑞々しさとほとばしるような
初々しい煌めきを感じる
愛らしい曲です。
私のイメージでは
新緑の中、朝露に濡れた
若いバラといった感じでした。
曲の終止形が
しっかりと終わっておらず
まるで、そのまま
未来へと開かれているいるようだと
評していらしたのは
舘野泉さんでしたでしょうか。
作品の愛らしさや短さ
けれども美しく澄んだ旋律ゆえに
コンサートのアンコールなどにも
選ばれやすいと言えるかもしれません。
24歳の時にグリーグが書き始めた
『抒情小曲集』の終わりは
34年余りの時を経て
最初の曲『アリエッタ』に
バリエーションを付けたような
『余韻』と題された曲で締めくくられます。
同じ曲調の2つでありながら
前者は未来へ向かって光り輝く
希望そのものを感じさせますし
後者は歩み来た日々を追想し
その余韻に浸るかのような
セピア色を帯びたイメージがしました。
過ぎ去った日々、その時間を
懐かしさと愛おしさを交え
振り返っているかのようです。
暖かく美しい響きはそのままに
セピア色をした
その最終曲の描く風景の最後は
ppp(ピアニッシッシモ)で幕を閉じます。
私たちは、生まれた時から
ある意味
生物学的な終焉に向かって
日々、進んでいます。
振り返れば
恥ずかしくなるような青臭さも
その時々には
失敗のように思えたことさえ
時の経過はもちろん
私たちの進化によって
大切な人生の軌跡の一部だ
と感じるように
なっているのかもしれません。
初めて弾いた9年近く前は
まだ『アリエッタ』の初々しさに
言い知れない香しさを覚え
その調べを気に入っていました。
最近になって
同じ曲集の同じ曲調である
最終曲『余韻』を
運転しながら
よく聴くようになっています。
先の舘野さんの評ではないですが
まるで大きな弧を描く
虹の橋の始まりから終わりまでを
人生と重ねて聴いているようです。
つい先日まで、若い
それこそ溌溂とした
青春真っただ中にある姪が
我が家で下宿していたことも
手伝っての思いかもしれません。
人生100年越えの時代です。
そして、本人次第で
幾つになっても
年齢を超えた魅力を備え
その人らしい輝きを増して
誰もがイキイキ活躍できる
時代にもなってきています。
これから未来の扉を自ら
次々と開いてゆく若者を前に
通り過ぎてきた時代を
懐かしく振り返るには
まだ早いのかもしれませんが
ノスタルジックな気分と共に
今あるこの瞬間瞬間に出逢う人々
そして、彼らと共にする景色や空気
何よりもそれらを通して
自分自身が感じて、考えて
この身に刻むことを
いっそう大切にしてゆきたい。
そう、改めて感じています。
◎6月の頭に訪れたカミツレ畑のカミツレは、盛りを既に過ぎ、花が写真のようにバドミントンのシャトルのような形になっているものが目立ちました。自然界にある草花や木々同様、私たちもそのサイクルに従って巡っています。だからこそ、この一瞬一瞬が愛おしいのかもしれません。
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皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
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