裏庭の片隅に置かれていたのを
目にしたのは
いつ頃からだったでしょうか。
ここ1週間ほどになりますか
むき出しのまま
立てかけられていた気がします。
遠目に見ていたので
薄汚れた印象が強く
両親の断捨離の一環なのだろうと
深く考えずにいました。
昨日、ちょっとした騒動があり
母から話を聴いて
実は母にとっての宝物だったことに
気づかされます。
母方の祖母が生前に
たいへん細い絹糸を用いて
作成した花の刺繍絵でした。
写真では背景がくすんだ
鼠色にも見えますが
元はもう少し茶の配色も
強かったようです。
非常に細かい糸で
背景も様々な色を混ぜて
刺繍によって
配色がなされています。
手先が器用で
刺繍が得意だったという祖母が
母のために作ったのか
それとも、いくつか試作した作品を
母が一ついただいたのか。
母にとっては大事な、大事な
思い出の品、また形見の一つ
だったことでしょう。
捨ててしまっていたのは
父ですが
理由を尋ねると額が壊れ
表面の硝子にもヒビが入っていた。
大変古いものなので
もう処分してもよいのだろうと
思ったのだそうです。
物が周辺に溢れすぎないよう
古くなり使わなくなったもの
不要な物の処理の仕方も
たいへん多様な時代です。
けれども、こうして
人の手が入った思い入れのあるものは
やはり歳月がどれだけ経とうと
手放せないことは
多いのかもしれません。
お子さんからご年配に至るまで
年齢によらずに同じ事が
言えるかと思います。
その人にとっての「大切」は
ご本人に訊ねてみなくては
わからないことがたくさんあります。
他者にはたとえ
ただの石ころに見えても
ご本人にとっては
大切な思いが刻まれたものであることは多い。
私たち誰もが
人生のどこかで
そんなノスタルジックな気持ちを
味わったことがあるようにも思います。
悪気がないのはわかっているので
特段、お咎めもなく
両親の間に諍いが起こることは
なかったものの
物に限ったことではなく
他者の大切だと思うことに
心を寄せて行動するということは
やはり大事なことだなと
身近な出来事を通して
改めて感じ入ることになりました。
心に刻んだ思いをも含め
大切なものに対し
持ち主が抱く思いは
他者の価値で測れるものではない。
そんなことを
しみじみ感じています。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
小松万佐子から皆様へのメッセージ
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