つい先日、たまたまつけた
深夜番組で
カナダのユーコンを舞台に
繰り広げられた
700Kmに及ぶ耐寒レースの
模様を放映していました。
もう何年も前の番組ですが
何度目かの再放送だったようです。
ご覧になられた方がいるかも
しれませんね。
私にとっての見所はいくつもあり
印象的なシーンや
発言がたくさんありました。
寒さが得意ではない私にとって
マイナス30~40℃の下で
夜もろくすっぽ眠らず
続行されるレースは
観ているだけでシビれました。
鉄人レースの類いなのでしょうか。
その中で印象に残った
あるシーンについて
本日はお話してみたいと思います。
参加者に最年少の若い女性が
いらっしゃいました。
過酷なレースでは
果敢に挑んだ強者たちですら
途中で思いがけない
ハプニングに見舞われ
涙をのむシーンがいくつか
撮影されています。
彼女がマイペースで進む脇に
腹痛を起して身動きできなくなり
寝袋に入っている参加者がいました。
走る脇のシュラフを横目に
次々と続くレース参加者のうち
一人がスタッフの助けを求める
ボタンを押して去っていきます。
皆、当然ながら自分のレースに
真剣に向き合っているので
できる範囲のことをして
自身のレースに集中する。
至極、まっとうなことだと思います。
ところが、その若い女性は
氷点下の気温の中立ち止まり
救援チームが到着するまで
シュラフに入り横たわる人に
寄り添う選択をしたのです。
マイナス30℃の世界で
足を動かさずに止まり
体温をただ奪われていく環境で
病人を励ますことは
どれほどの思いなんでしょう。
本人自身が相当にしんどくなるはず。
また、順位は当然最下位になります。
1時間近く経って救援隊が来て
彼女は手当を受けられることになった
急病人の安全を見届け
再びレースに戻っていきました。
この様子を指して
番組にゲストとして
参加なさっていた著名な方が
「心の勝利」と
おっしゃっていました。
私は「勝利」という言葉が
適切かどうかはわかりませんが
あの場で自分ならどうするかな
ということは考えてみました。
数年前、約27年近いブランクを経て
弾くことそのものを再開して
わずか数ヶ月でいきなり参加し
運良く予選が通ってしまい
挑んだピアノコンクール本選。
本番に備え、着替えようと
控え室へいったときのこと。
突然、脇でドレスを着た参加者が
「いたたた!!!!!」と
声をあげて座りこみます。
どうやら足が攣ったらしい。
足が攣るにも様々なレベルがあり
しんどい時は
のたうちまわるような
猛烈な痛みだということは
私もよく攣る体質だったので
なんとなくわかりました。
いろいろ処置をして差し上げても
すぐにぶり返してしまう。
頭を抱えているとその方が
「ありがとうございます。
こんなにまでしていただいて・・」
「でも、今はもう
立って歩くことすら
無理そうなので
ものすごく悔しくて残念ですが
今回はあきらめます」
とおっしゃるではないですか。
どこからいらしたのか訪ねると
兵庫県とおっしゃいます。
私はとっさに言ってしまって
いました。
「兵庫県からはるばる
都内の本選まで鍛錬積んでやって来て
そう簡単に
出場を諦められますかいな。
絶対に諦めないでいらしてくださいね」
「ちょっと待っててくださいね。
バナナを買ってきますから!」
すぐに痙攣をおさめるには
バナナに即効性があることは
知っていたので
バナナを求めて休日の大手町に
飛び出します。
ところが、秋の連休中の
都心とあって
コンビニまで片っ端から
閉まっている始末。
どこまで行っても
スーパーがないエリアなのは当然
空いているコンビニや
スタバのように
バナナを売っている
店舗すら見つかりません。
15分近く探し回ったでしょうか。
もう、彼女の本番となるため
力を尽くせなかったことに
肩を落として戻る途中・・・。
なんと、会場入り口にある
コーヒースタンドのメニュー看板に
リンゴ酢ドリンクを見つけます。
速攻で買い
会場ロビーのあちこちで談笑する
仲間や友人たちが
そろって振り返るほどの猛烈な勢いで
舞台裏にすっ飛びます。
酢にも足が攣るのを
多少は軽減する作用があることを
知ってのことでした。
本番二人前になっていた
その方にリンゴ酢のドリンクを渡し
お飲みいただき
「大丈夫ですからね!
ご自身とご自分のやってらした
ことだけ信じてふぁいとです!」
とだけ伝えて離れました。
そして、はっと気づけば私も本番。
かなり「やべーでございます!」という
状態であることに気づき
慌ててドレスに着替える羽目に・・。
着替えながら、その方が最後まで
舞台で弾ききったことを
モニターで確認だけし
慌てて楽屋袖へ向かい
自分の舞台に挑むための
集中を始めます。
結果、大きな賞を2つ受賞する
ラッキーパンチをいただくも
当時の師匠からは
集中を欠いた一連の行動を
厳しく注意されます。
確かに、なりふり構わず
「兵庫からこの日のために
練習積んでやってきて
そう簡単に
あきらめられますかいな」
と勝手に他人事に
首を突っ込んだ私の行動は
決して褒められたものでは
ないと思います。
でも、あのまま
目の前でのたうちまわる
あの方を横目に
周りの方々同様
どうしていいか戸惑い
呆然としながらも
自分の演奏準備に
集中できていたかを考えると
それはできなかったように
思っています。
こういう部分の感覚は
人の数だけいろいろあって
良いと思うので
正解も不正解も
良いも悪いも
ないことなのでしょう。
自分がどう感じ
それに対しとった行動に
後悔をしないことだけが
大事な部分なのかもしれません。
あの時の私は幸いにも(ん??)
”ピアノ演奏に集中しなくては”
という考えがほとんどなく
ためらわずに動いてしまっていた。
それだけのことだったような
気がします。
後々、師匠から
散々に注意を促されても
仕方ないことだったかも
しれませんね。
それでも、頂いた大きな賞よりも
事務局が翌年以降の
コンクールパンフレットに用いた
写真に写る私の表彰シーン。
表彰者ではなく
表彰中の会場の様子を写した
写真なのですが
ご自身は舞台に上がり
見事に弾ききるも
最強の腕前を持たれながら
その年には受賞を逃した
足の攣ったあの方が
自分のことのように大喜びされ
晴れやかな表情と拍手を
私に送ってくださっている様子が
しっかりと写っています。
何気なく切り取られた
この写真が実は
私にとって
何よりうれしい賞だった。
そんな風に感じています。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
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