学校の運動会で思い切り走りたい。
梅雨の時季
少し肌寒い日になると
ある少年のことを思い出します。
安曇野市には
「県立こども病院」という
子供さんの治療に特化した
大きな病院があります。
当時通っていた
体のメンテナンス施設院に
お母さんと一緒にいらしていた
小学生の男の子がいました。
ちょうど今時分の季節
紫陽花が咲きめた雨の日でした。
件のこども病院から退院し
自宅で療養となったのか
民間療法を試みていたのでしょう。
カーテンの向こうから
施術を受けながら語る
かけっこで一等賞をとる夢の話が
聴こえてきます。
入り際に見かけた
男の子の頭には
髪の毛が一本もありません。
顔色は透けるように青白く
頬はこけ、体つきも痩せて細い。
それでも、瞳だけは
きらきらしていました。
声は小さめですが
一生懸命に
かけっこの話をしていました。
校庭を走ったことがないばかりか
病気を発症してから
歩くことが困難のようです。
車椅子で施設にはやってきました。
学校も、入学して以来
ほとんど通ったことがない様子。
それでも、いつか見た
みんなが応援してくれるなか
一番最初にテープを切る瞬間を
味わいたかったのでしょう。
どんな風に手を動かすといいか
施術なさる先生に
熱く語っている様子が印象的でした。
それから半年くらい経って
久しぶりに訪ねた施設で
担当されてらした先生に
あの少年がどうしてるか
何気なく訊ねてみました。
残念ながら
あのとき、緩和ケアの一環として
施設を訪ねてきた男の子には
もう時間が残されていなかった。
かけっこの夢は果たされれぬまま
逝ってしまったのです。
それでも、最期まで
自分には必ずできると信じて
描いた夢と小さな生命。
”生きているだけで丸儲け”
とは誰の言葉だったか・・。
命さえあれば
どんなことでもできるんだよな
と雨を軽快に弾く
紫陽花の青々とした葉っぱを眺め
思います。
生きていればこそ・・
生きているだけで及第点以上
そんな気持ちが
この時季ほど強く感じられるのは
あの少年のきらきらした瞳が
紫陽花の葉の上で光る雨粒と
どこか重なるからなのかもしれません。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
小松万佐子から皆様へのメッセージ
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