昨日のブログに続き、挨拶にまつわるお話を書いてみます。
「こんにちは」、「おはようございます」、「ありがとうございます」、「さようなら」。
改めて文字にすると、挨拶の言葉はきわめてシンプルですね。
わずか数文字で、まっすぐに心に響きやすくなっています。
にこやかに「こんにちは」、ちょっとしたことにでも「ありがとうございます」と知り合いはもちろん、知らない人に言われただけで心が晴れ上がるような気持ちになるから挨拶は不思議です。
こちらから率先して放っても幸せな気持ちになれますし、相手からされても途端に気持ちが明るく元気になったような気がします。
ましてや、挨拶をきっかけとしてそのあとにさらにキャッチボールが続くとなおさら心が弾みうれしい気持ちになります。
挨拶はまるで魔法のようですね。
発することで心の窓が開く、まさに魔法です。
何年か前、運転免許を取得するために教習所に通っていた頃のこと。
最終日、試験の朝でした。
私は父とささいなことで喧嘩をし朝から猛烈に不機嫌でした。
当時は母がまだ絶不調の最中で、私も父も毎日神経をすり減らし、お互いに心がギリギリのところで踏ん張っている状態でした。
少しのことでどちらも感情を爆発させているような、まだまだ人生学び途中の時期でしたから仕方ないのかもしれません。
その日は梅雨の終盤で、早朝からしっかりと降る雨の日でしたから喧嘩で乱れた感情に上乗せするかのように不快指数が高まっていました。
教習所の前にある大学病院の駐車場まで送ってもらうまで喧嘩は続き、私は捨てぜりふを吐いて車を降りバタンとあてつけのようにドアを勢いよく閉めます。
心の中では「こんなに心が乱れていたら、受かるものも受かんないだろうな・・」と思いました。
ただ無性にイライラして仕方ないまま、大学病院内のコーヒー屋に寄ってから教習所へ向かうことにしました。
本降りの雨の湿気でむせかえるような院内。朝方とあって混み気味のコーヒー屋の会計の列にさらに苛立ちは募ります。
列に並んでいる間も先ほどまでの父との喧嘩で覚えた腹立たしさは収まりませんでした。
ようやく順番になり、注文したコーヒーを受け取り帰ろうとしたときのこと。
丁寧にその頭をさげる心地よい笑顔付きの「ありがとうざいました」に続き、「外は雨がひどいでしょうから、傘を持ちながらでは大変でしょう。よろしければ袋にお入れしましょうか」と雫を垂らす私の傘の先に目をやる男性店員に訊ねられました。
年齢は50代半ばくらいのベテランスタッフのようで、無理のない柔らかい表情で話しかけてくれます。
「では、お願いします!」と返した私に紙袋へセットしたコーヒーを渡しながら「今日は一日降るようですから、どうぞお足元には気を付けて良い一日をお過ごしくださいね」。「ありがとうございました。いってらっしゃいませ」とやはり頭を丁寧にさげ見送ってくださいました。
私はその「いってらっしゃいませ」までを聞き、少し前まで自分が何に苛立っていたのかすら忘れてしまうような感覚に陥ります。
胸のあたりがホッコリとただ理由もなく温かく、先ほどまでイライラしていた細かいことがどうでも良くなりました。
男性のスタッフが何の気なしに、それでも真心を込めて発した挨拶と、そこからさらに先に繋がる向き合う私を感じて言葉を選び発してくださったささやかな会話が私の強張った心を見事に打ち砕いたのです。
まさに魔法にかけられたようでした。
急に心が軽やかになり、何に腹を立てていたのかを忘れるほどに穏やかな気持ちになっていました。
その日の試験は、見事にパスしようやく免許取得に至ったのでした。
私たちは感情を持つ生身の人間なので挨拶をされても、すんなり返事をしにくい心模様のこともあるでしょう。
あるいは相手の様子によっては声をかけるのをためらってしまうような状況もあることと思います。
それでも、そんな少し憂鬱な気分を打ち破ってしまうほどの力が、挨拶のわずか数文字には秘められているのですから不思議です。
迎えた一日がどんなであっても、それまでの気持ちを一転させモヤを晴らしてしまうような魔法の数文字、挨拶。
身近な人々はもちろん、その日出会うすべての人々と交わし合えたら素敵ですね。
「おはよう」や「ありがとうございます」で始まる今日一日が、皆さんにとって心が晴れやかになる素晴らしい時間となりますように。
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今日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
皆さまが柔らかな心で一日過ごせますように。
小松万佐子から皆様へのメッセージ
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